『「移民流入」日本4位に』は本当か?


5月30日付けの西日本新聞の記事より。
「移民流入」日本4位に 15年39万人、5年で12万人増
2018年05月30日06時00分 (更新 05月30日 11時21分)

 人口減と少子高齢化による人手不足を背景に、日本で働く外国人が増え続ける中、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の最新(2015年)の外国人移住者統計で、日本への流入者は前年比約5万5千人増の約39万人となり、前年の5位から韓国を抜いて4位に上昇した。OECDの国際移住データベースから判明。日本が事実上の「移民大国」であることが浮き彫りになった。日本語教育の推進など定住外国人の支援策が急がれる。


割とセンセーショナルな見出しの記事ですが、私が最初にこれを見たときにすごく違和感がありました。何故かというと、今の日本が移民大国のカナダとオーストラリア(豪州)を差し置いて上位に立つことがあるんだろうか?という疑問があったからです。記事の論調は、「日本は移民大国になったのだから定住外国人の支援策の充実が必要」というものです。これをサポートするデータが果たして本当なのかどうか調べてみることにしました。

元データを確認する

データの出所は記事中に「OECDの国際移住データベースから判明」とあるので調べてみると、

Key Statistics on migration in OECD countries

がすぐに見つかりました。ここにある「Inflows of foreign population」(エクセルファイル)が元データのようです。開いてみると、

こんな感じで各国の2005年から2015年までの「外国からの流入人口」が並んでいます。さっそくこれを使って件の記事のグラフと表を作ってみましょう。

多少見栄えが違いますが同じグラフと表を作ることができました。ここで分かった事が2点あります。
一つ目は、豪州とカナダ・米国の流入人口データは「Permanent」と「Temporary」に分けてあります。これらはStatistical Annex(PDFファイル)に定義が書かれていて、いづれも短期訪問者を除いたビザ保持者でそれぞれ永住ビザ保持者と長期滞在ビザ保持者を分けて表示しているものです。日本の場合はこれらを分けないで一緒にした数字が表示されています。件の記事中でも「日本への移住者は「有効なビザを保有し、90日以上在留予定の外国人」を計上しているという」と書かれていて、この辺の事は認識しているように見えます。それなのに、豪州とカナダ・米国については何故か永住ビザ保持者(Permanent)の数字だけを採用して記事の中のグラフや表を描いています。
二つ目は、元データには2005年から2015年までのデータが掲載されていますが、件の記事では2010年から2015年までのデータを取り出して採用しています。記事には、「日本への流入者は前年比約5万5千人増の約39万人となり、前年の5位から韓国を抜いて4位に上昇した。」「日本が事実上の「移民大国」であることが浮き彫りになった。」という風に書いてあり、この期間で日本の外国人流入が激増していることが強調されています。

全ての流入者数のデータを使ってみた

豪州とカナダ・米国それぞれの「Permanent」と「Temporary」を合計してグラフと表を作り直してみました。


どうですか?大分様子が変わってきましたね。
2015年は日本は10カ国中4位が6位に後退しました。米国もドイツを抜いて1位に躍り出てきました。米国・ドイツ・豪州がぶっちぎりの上位3位を占めて私の感覚と一致しています。
日本は下位集団の混戦状態の中で目立たない状態です。それでも上昇基調にあるのは確かなようです。

2005年から2015年まで全期間のデータを使ってみた

二つ目の疑問点の2010年から2015年のデータのみ取り出して評価している点について、データの全期間で評価してみるとどうなるでしょうか。そうするとこんな感じになります。

どうですか?何か別の姿が見えてきませんか?実は「過去2005年から2010年に向けて日本は順位を下げていた」のです。2005年は7位だったのがどんどん下がって9位になりそれがまた上がっていって2015年に6位になったという訳です。このグラフのままでは混線していて見難いので日本のデータだけ取り出し、さらに「ある情報」を加えてグラフを描いてみましょう。

どうでしょうか?さらに、2011年3月に東日本大震災が起こったことも考えると2011年に谷底で外国人の流入が変化した理由は何なのか、想像に難くないと思います。

まとめ

結論を言うと『「移民流入」日本4位に』は『ウソ』だと思います。
記事は日本と同じ条件のデータ同士で比較しないで日本の順位が上がるように操作したように見えることや、その順位も上昇基調の前は下降基調であったのが再び上昇に転じただけであり、少なくとも【『前年の5位から韓国を抜いて4位に上昇した。』ことで『日本が事実上の「移民大国」であることが浮き彫りになった。】と結論付けるのは大きな間違いだと言えるでしょう。

(多分続く)

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